リハビリテーション法 第508条の電子・情報技術アクセシビリティ基準

米国では、リハビリテーション法 第508条によって、連邦政府が調達、使用する製品や、一般市民に提供する情報、サービスに対して、障害を持つ政府職員・一般市民が、障害を持たない人と同等にアクセスできるようにすることが義務付けられています。(リハビリテーション法自体の対象は連邦政府ですが、アシスティブ・テクノロジー法という別の法律によって、リハビリテーション法 第508条は州政府にも適用されます。)

この第508条の施行ガイドラインにあたる「電子・情報技術アクセシビリティ基準(Electronic and Information Technology Accessibility Standards)」が、2001年6月21日から実施されました。政府のWebサイトや、連邦政府が新たに購入する情報機器やソフトウェアなどは、それが「過度の負担」とならない限り、電子・情報技術アクセシビリティ基準を満たさなければなりません。基準を満たしていない場合、その不備を訴えて個人が訴訟を起こすことができます。Webサイトをアクセシブルにすることは「過度の負担」とは認められませので、政府関連のサイトは、6月以降アクセシブルなサイトに改装されています。

政府に製品を納入している民間業者のWebサイトにまでは、アクセシビリティの保証は義務付けられていません。

最大の顧客である米国政府向けの製品・サービスをアクセシブルにしなければならないということで、アクセシビリティ基準は、IT業界の大きな注目を集めています。

ここでは、電子・情報技術アクセシビリティ基準の成り立ちと、その中でWebサイトのアクセシビリティに言及している部分をご紹介します。

電子・情報技術アクセシビリティ基準の成り立ち

リハビリテーション法 第508条は、1986年にリハビリテーション法に追加されました。当初は連邦政府職員が使用する電子機器など、主にハードウェアのアクセシビリティについて規定していましたが、1992年に改正されて、アプリケーションやOSなどのソフトウェア関連の規定も追加されました。しかし、基準が曖昧で、あまり遵守されませんでした。そこで、1998年にさらに改正され、第508条の具体的な指針となる電子・情報技術アクセシビリティ基準を、アクセス委員会(Access Board)が作成することになりました。

アクセス委員会は独立の連邦機関で、建築物や交通機関、電気通信まわりなども含めた障害者のアクセシビリティ問題を専門としています。電子・情報技術アクセシビリティ基準の作成のために、アクセス委員会の中に電子・情報技術アクセシビリティ諮問委員会(Electronic and Information Technology Accessibility Advisory Committee:EITAAC)が設けられました。EITAACは、全米視覚障害者連盟のような障害者団体、トレース・センターのような研究機関、IBM、マイクロソフト、サンマイクロシステムズのような民間企業、そしてWAIなど27組織から構成されています。

アクセシビリティ基準は、当初は2000年2月7日までに作成され、その6ヶ月後(つまり、2000年8月7日)から実施されるはずでした。しかし、IT業界などからそんなに早くは対応できないというような声が上がったこともあり、基準の公示・実施時期が延期されました。アクセシビリティ基準が最終的に公示されたのは、2000年12月21日です。その6ヶ月後が、2001年6月21日に当たるわけです。

電子・情報技術アクセシビリティ基準の内容

電子・情報技術アクセシビリティ基準では、ソフトウェア・OS、Webサイト・Webアプリケーション、電気通信製品、ビデオ・マルチメディア製品、コピー機・プリンタ・FAXなどのソフト内蔵の製品、デスクトップ・ポータブルパソコンについて、これらを障害者が使用できるようにするために、どのような機能を盛り込まなければならないかを、具体的に示しています。

以下に、アクセシビリティ基準中で、Webのアクセシビリティに言及している個所の日本語訳を掲載します。
原文は、以下のページに掲載されています。

Electronic and Information Technology Accessibility Standards
ARCHITECTURAL AND TRANSPORTATION BARRIERS COMPLIANCE BOARD
http://www.access-board.gov/sec508/508standards.htm

電子・情報技術アクセシビリティ基準
サブパートB - 技術基準
1194.22 ウェブベースのイントラネット、インターネット情報およびアプリケーション

(a) 非テキスト要素には、それぞれテキスト等価物を提供しなければならない。(たとえば、alt、longdescによるか、または要素のコンテンツ内などで記述する。)
(b) マルチメディアのプレゼンテーションと等価の代替物は、全て、プレゼンテーションと同期しなければならない。
(c) ウェブページは、カラーで伝達される全ての情報が、コンテキストやマークアップなどによって、色なしでも利用できるように設計されなければならない。
(d) 文書は、関連付けられているスタイルシートがなくても、判読できるように構成されなければならない。
(e) サーバー・サイド・イメージマップのアクティブな領域ごとに、詳細なテキスト・リンクを付けなければならない。
(f) 利用可能な幾何学形で領域を定義することが不可能な場合を除き、サーバー・サイド・イメージマップの代わりにクライアント・サイド・イメージマップを提供しなければならない。
(g) データ・テーブルの場合、行と列のヘッダが識別できなければならない。
(h) 行と列のヘッダが論理的に2階層以上に分かれるデータ・テーブルの場合、マークアップを使用して、データ・セルとヘッダ・セルを関連付けなければならない。
(i) フレームには、テキストのタイトルを付けて、容易に識別、ナビゲーションできるようにしなければならない。
(j) ページは、2〜55ヘルツの周波数で画面が点滅するのを避けるようにデザインされなければならない。
(k) 他のどんな方法でも、この基準を満たすことができない場合、同等の情報または機能を持つテキストのみのページを提供し、ウェブサイトが、このパートの規定に従うようにしなければならない。元のページが変更される時はいつでも、テキストのみのページのコンテンツも更新されなければならない。
(l) コンテンツの表示、あるいはインターフェース要素の作成に、スクリプティング言語を使用する場合、スクリプトによって提供される情報と、アシスティブ・テクノロジーによって判読可能なテキストが同等の機能を持たなければならない。
(m) ウェブページのコンテンツを解釈するために、クライアント・システムにアプレット、プラグイン、その他のアプリケーションを必要とするウェブページでは、1194.21(a)から(l)を遵守するプラグインまたはアプレットへのリンクを、そのページに付けなければならない。
(n) オンラインで記入するように設計されている電子フォームの場合、そのフォームで、アシスティブ・テクノロジーを使用する人々が、指示や合図を含め、情報、フィールド要素、およびフォームを完了・送信するために必要な機能を使用できるようにしなければならない。
(o) ユーザがナビゲーション・リンクの繰り返しをスキップする方法を、提供しなければならない。
(p) 決められた時間内の応答が必要な場合、ユーザに警告を出し、ユーザがもっと時間が必要なことを知らせるために十分な時間を取らなければならない。

1194.22の原注

  1. 委員会は、このセクションの(a)節から(k)節を、WWWコンソーシアムのウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブが、1999年5月5日に発表したウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン 1.0(WCAG 1.0)の、以下の優先度1のチェックポイントと一致するものと解釈する。
セクション1194.22の節 WCAG 1.0 チェックポイント
(a) 1.1
(b) 1.4
(c) 2.1
(d) 6.1
(e) 1.2
(f) 9.1
(g) 5.1
(h) 5.2
(i) 12.1
(j) 7.1
(k) 11.4
  1. このセクションの(l)、(m)、(n)、(o)、(p)節は、ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン 1.0とは異なる。ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドラインのレベルA(優先度1の全てのチェックポイント)に従うウェブページは、さらに、このセクションの(l)、(m)、(n)、(o)、(p)節にも従わなければならない。
    ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン 1.0は、http://www.w3.org/TR/1999/WAI-WEBCONTENT-19990505で入手できる。

関連情報

Federal IT Accessibility Initiative (英語)

  • 508条の実施のための技術支援を行う連邦ITアクセシビリティ・イニシアティブのサイトです。508条およびアクセシビリティ関連の米国の法律の情報を掲載しています。

JEITA(社団法人電子情報技術産業協会) パーソナル情報部会

  • 508条と電子・情報技術アクセシビリティ基準の日本語訳や米国の情報機器アクセシビリティに関する法律の実態調査報告書などがあります。